
【店頭の実話 #08】電話帳の登録1件で怒鳴り始めたお客さんに、警察を呼んだ話
2026-07-03 公開 · 2026-10-03 更新 · 約9分で読めます
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現役の携帯ショップ店員(勤務10年以上)が書いています。日々の接客で実際に見聞きした内容をもとに、店頭の実情を書いています。プロフィール
この記事でわかること
- 店頭で実際に警察を呼んだ日の出来事
- 大きな声を出すと、かえって解決が遅くなる理由
- 2026年10月から会社の義務になった「カスハラ対策」と、国がすすめる上手な伝え方
その日の店内は混んでいた。
手続き中のお客さんがいて、順番を待っているお客さんもいる。そんなタイミングで、それは起きた。
「俺を先に対応しろ」
怒鳴り声が店内に響いた。
年配の男性だった。要件は電話帳の登録、たった1件。
電話帳の登録は、慣れたスタッフなら5分もあれば終わる作業だ。その5分を待てなかった。
「なんで俺が待たないといけないんだ。先に対応しろ」
手続き中のお客さんも、待っているお客さんも、みんなその声に気づいた。新人スタッフも固まっていた。
こちらも対応に入った。ただ、声は収まらなかった。
上司が出た。それでも聞かなかった。
上司が前に出た。
「他のお客様のご迷惑になりますので、おやめいただかないと警察を呼びます」
普通はここで落ち着く。
聞かなかった。
警察を呼んだ
110番した。
電話をしている間も、声は続いていた。
そして、パトカーが来るまでの間に——男性はいなくなっていた。
店内が、静かになった。
後日談
その男性、後で警察から事情聴取されたらしい。
逃げても、記録は残る。
携帯ショップで働いて気づいたこと
この仕事をしていると、年に数回こういう場面がある。
そのたびに思うのは、怖いのは自分よりも他のお客さんと、新人スタッフだということだ。
- 手続き中のお客さんは、怖くて集中できない
- 待っているお客さんは、帰りたくても帰れない
- 新人スタッフは、体が固まって動けない
大声を出せば優先してもらえると思っている人がいるなら、逆だと伝えたい。
その瞬間から、対応の優先順位の一番下になる。
実は、怒った人ほど「損」をしている
さっき「大声を出すと優先順位は一番下になる」と書いた。これは意地悪で言っているんじゃなくて、事実としてそうなってしまう、という話だ。
10年この仕事をしていて、困りごとが「早く・気持ちよく」解決する人には、共通点がある。
① 感情ではなく、事実を伝える
「ふざけるな」ではなく「これで困っている」。何に困っているかを落ち着いて伝えてくれる人ほど、こちらもすぐ動ける。怒りをぶつけられると、人は萎縮するか、身構える。結果、解決は遠のく。
② 「できること」と「できないこと」を一緒に探せる
こちらも、ルール上どうしてもできないことはある。そこを「なんとかしろ」と押し切ろうとするより、「じゃあ、どうすればいい?」と一緒に代替案を探せる人の方が、結局いい着地になる。店員は、味方につけた方が絶対に得だ。
③ 一言、ねぎらいがある
「混んでるのに、ありがとう」「手間かけてごめんね」——たったこれだけで、対応する側の気持ちは変わる。人間だから、正直だ。そして、そういうお客さんには、こちらも「一番いい方法」を本気で探したくなる。
昔からの言葉で「短気は損気」というのがあるが、店頭ほどそれが当てはまる場所はないと思う。困ったときこそ、落ち着いて、味方をつくる。それが、自分にとって一番得な向き合い方だ。
同じ用件でも、言い方ひとつで進み方が変わる。
| つい言ってしまう言い方 | 早く解決しやすい言い方 |
|---|---|
| 「ふざけるな」 | 「これで困っています」 |
| 「なんとかしろ」 | 「どうすればいいですか?」 |
| 「いつまで待たせるんだ」 | 「あとどれくらいかかりそうですか?」 |
警察を呼んだ後、店内に残った空気
パトカーのサイレンが聞こえ始めたあたりで、その男性の足が止まった。
そして静かに出口へ向かい、いなくなった。
店内にいた他のお客さんは、誰も何も言わなかった。ただ「大丈夫ですか」と声をかけてくれた方が数名いた。その一言が、正直一番ありがたかった。
新人スタッフは顔が真っ青だった。「大丈夫だよ」と声をかけたが、しばらくは震えていた。こういう場面で一番傷つくのは、経験のない若いスタッフだと改めて思った。
手続きが再開できたのは、落ち着くまでに15分ほどかかってからだった。
店としての対応と、その後
この種の案件は必ず記録に残す。
日時・状況・対応内容・警察を呼んだ事実。記録を残すことは、同じお客さんが再来店したときの判断材料になるし、スタッフを守る証拠にもなる。
実際、後日その男性について警察から確認の連絡があった。逃げても「記録は消えない」というのは本当のことだ。
ショップとして断れる権利がある。暴力や脅迫、著しく迷惑な言動に対しては、「対応できません」と伝えることも選択肢に入る。お客さんの要求をすべて飲まなければならない義務はない。
2026年10月から、カスハラ対策は会社の義務になった
この出来事のあと、世の中のルールも変わった。
2026年10月1日から、お客さんからの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント=カスハラ)への対策が、会社の義務になった。法律(改正労働施策総合推進法)で決まったことだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| いつから | 2026年10月1日 |
| 何が義務に | 働く人をカスハラから守るための対策 |
| 会社がやること | 方針を決めて知らせる/相談窓口をつくる/起きたときに事実を確かめ、働く人を守る/再発を防ぐ |
どんな行為が当てはまりうるかの例も、国が示している。
- 大きな声をあげて、働く人やまわりを威圧する
- 人格を否定するような暴言、土下座の強要
- 同じ質問や要求を、しつこくくり返す
- 長時間の居座りや、電話での拘束
- 契約の内容を大きく超えるサービスの要求
冒頭の「先に対応しろ」という怒鳴り声は、この1つ目の例に近い。
ただし、不満を伝えること自体は、カスハラではない。商品やサービスへの正当な意見は、お客さんの権利だ。国の説明でも、常識の範囲の正当なクレームはカスハラに当たらない、と書かれている。問題になるのは、要求の中身や伝え方が行き過ぎた場合だ。
出典:政府広報オンライン「カスハラとは?法改正により義務化されるカスハラ対策の内容やカスハラ加害者とならないためのポイントをご紹介」
国がすすめる「上手な伝え方」5つ
同じ政府広報のページでは、消費者庁の「上手な意見の伝え方」も紹介されている。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ひと呼吸おく | 感情的になる前に、まず落ち着く |
| 具体的に伝える | 何を、どうしてほしいのか。理由も一緒に伝える |
| 最後まで聞く | 相手の説明や理由を、途中でさえぎらない |
| 相手の立場を考える | 担当者によっては、すぐに対応できないこともある |
| 敬意を持つ | お客さんも店員も、同じ人間 |
この記事の前半で書いた3つ(事実を伝える・一緒に探す・ねぎらう)と、ほとんど同じことが書かれている。店頭で10年感じてきたことは、国の資料にもそのまま載っていた。
なぜこの話を書くのか
「こんなことがあった」という話として終わらせたくない理由がある。
ショップに来るほとんどのお客さんは、本当に普通の人だ。困って来て、解決して帰る。それが日常の仕事だ。
ただ、ごくたまにこういう場面がある。そのたびに思うのは、「スタッフも人間だ」ということだ。
何十分待っても笑顔で対応している裏側に、こういう経験が積み重なっている。携帯ショップで働くスタッフに対して、少し優しくしてもらえると嬉しい。
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この記事を書いた人
会社脱出ラボ管理人(携帯ショップ店員・30代)
携帯ショップに10年以上勤務。リベ大YouTubeをきっかけにインデックス投資を開始し、資産450万円→2,395万円を達成。 Claude AIでIT知識ゼロからブログを構築。「会社に依存しない生活」を目指して実験中。